第5話「影薪の番人」
焚き火の炎が語るのは、記憶か、それとも……心か。
焚き火を極めた者は、火と会話ができるという。
そう、たとえば……“あの男”のように。
🌲禁薪処分を受けた男「クロカワ翁」
プーさんおじさんは、ある人物を探していた。
名前は知られていない。人は彼をこう呼ぶ――クロカワ翁。
かつて林業省に属し、「自然燃焼比率98%」という伝説の焚き火を達成した焚き火職人。
政府に逆らい、“規格外の薪”を流通させた罪で、永久焚火禁止処分を受け、姿を消していた。
「彼なら……影薪の在り処を知っている」
「いや、もしかしたら……彼自身が“影薪”を作ったのかもしれない」
🧸山奥の庵(いおり)
その場所は地図にない。
古い薪愛好会の掲示板にだけ残された暗号をもとに、
プーさんおじさんは、深い山へ分け入った。
「……本物の火の匂いだ」
山の奥、ぽつんと建つ庵。
そこには、静かに火を囲む白髪の男がいた。
彼の焚き火には、煙がない。音もない。ただ、温かかった。
🔥影薪の正体
「来たか……薪王」
「あなたが……クロカワ翁」
「違う。私はただの、火に聞く者だ」
男は、焚き火をじっと見つめながら語った。
「影薪とはな、特別な木じゃない。
それは“焚き火を囲む者の想い”で生まれる薪だ」
「心を焚べた時、人は火を通して繋がる。
その時にだけ、火は影薪に変わるんだ」
🚨ラスト:受け継がれる火
男は、薪を一本だけ渡した。
「これは、ただの薪だ。だが、君が使えば“影薪”になる」
「どうすれば……?」
「想え。炎の中に、誰を、何を、見たいのかを」
プーさんおじさんは、静かに薪を手に取った。
そして、焚き火にくべた。
炎が揺らぐ。まるで…誰かが、笑っているようだった。
それはカリカリか、カタログか、あるいは――あの頃の自分か。
🔥次回予告(第6話案)
第6話「焚き火裁判とLOGの審問」
焚火取締局に拘束されたカリカリの裁判が開かれる。
証拠として提出されたのは一本の薪と、燃え残った“LOGの木片”。
プーさんおじさんは、影薪の秘密を武器に、法廷という名の焚き火台に立つ。
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